5人が本棚に入れています
本棚に追加
「いやー、お久し振りですねぇ♪利光さんっ♪」
「えぇ…」
織田信長だと名乗ったその声は少年のように若々しく、馴れ馴れしい
ムリに明るく陽気にしているような
また、どこかバカにしているような気もする
「もう全部話しちゃいましたぁ?」
「いや、まだ…」
「相変わらずおっきなお家ですねぇ♪」
「……」
自分で質問しておきながら
その答えには全く興味を示さない
玄関からの短い距離の会話で
あたしはこの男が嫌いになった
「いやー、どうもどうもっ♪あなたがヒカリさんですねぇ♪お美しいっ♪」
その男は間違いなく
完全に
疑いようもなく
誰がどう見ても
「少年」だった
背丈も160cmのあたしより低い
スーツ姿の少年はゆっくりとあたしに近づき、名刺を渡した
「どうぞっ♪」
株式会社 「織田信長」
社長 織田信長
……こんなバカな名刺は初めて見た
「さてっ、何から話しましょうかねぇ♪」
「始めからだ……」
「えー?利光さん全然教えてないんですかぁ?めんどくさいなぁ…」
目の前で何が起こっているのか
この「織田信長」と名乗る少年は何者なのか
おじいちゃんとの関係は?
混乱しすぎて声が出ない
あたしの隣におじいちゃん
テーブルを挟んだ向かいに少年は座った
「そうだなぁ…じゃ、まずは自己紹介から♪僕は織田信長です♪ホンモノですよー♪歴史の教科書に載ってる「あの」織田信長です♪」
少年はあたしが何か言いたそうな顔をしてることを確認していながら
無視して話し続ける
「本能寺ではあなた方のご先祖様である明智光秀、通称ミッチーをちょちょいと騙して殺しちゃいましたぁ♪ごめんなさいっ♪」
……ムカツク
「んでぇ、いろいろあって自由になりたかったので歴史変えちゃったっ♪てへぺろ♪」
……ムカツク
「あら?お客さん?」
少年のムカツク声に気付いたお母さんが部屋の戸を開けた
「ちょっと、お茶くらい出し……」
少年はあたしの瞳をじっと見たまま左手をお母さんに向け拳を開いた
「……………」
お母さんが止まってる
動かない
目を見開いたまま
まるで時が止まってるかのように…
少年はさっきまでの陽気な雰囲気ではなく、なんていうか……すごく……邪悪な感じがする…
「凡人は黙ってろ♪」
最初のコメントを投稿しよう!