36人が本棚に入れています
本棚に追加
/266ページ
私と俊哉は、その日の放課後、北条の住む家に向かった。
…が。到着して唖然とした。
「ほ、ホントに此処なの?」
「た、確かに此処ッスよ?」
立派な和風の門構えに、黒塗りのベンツが横付けの状態で駐車し、その大きな日本家屋の屋敷に、私はテレビドラマのシーンでよく見たものがよぎる。
「まさか…ヤク…ザ?」
「か、帰りましょう詩帆ちゃん!てか、俺用事を思い出したッス!」
私以上に怯えて声が裏返ると、大きな門構えの脇にある小さな扉から、サングラスを掛けたいかにも屈強そうな男が現れた。
「…誰だ?人ン家の前で騒いでンのは?」
「こ…こんにちは!ほ、北条さんのお宅ですか?」
俊哉は意を決して男に尋ねると、男は舐め回す様に私達を見た。
「…白百合お嬢さんのクラスメートで?」
「えっと…し、知り合いです」
ウンウンと頷く俊哉に、男は「白百合お嬢様なら留守だ」と答えた。
「そ、そうですか!帰りましょう詩帆ちゃん!」
「そ、そうね」
私達が男に頭を下げてロボットの様に回れ右をした直後、突然男は「待ちな」と言った。
「な、何か?」
「そこのお前、詩帆っつーのか?」
男が私を指差して言うと、更に男は「どうなんだ?」と低音の声を発する。
「は、ハイ。東間詩帆ですけど?」
「そうか…なら家に入りな。そこの坊主、テメェもだ」
「お、俺も?」
.
最初のコメントを投稿しよう!