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長い沈黙と、中庭の小池から聞こえるコンッと竹の音が聴こえると、襖が開いて強面の男が入ってくる。
「東間詩帆。お嬢様が呼んでいるから来い」
「え?あ、あの…アタシ、だけ?」
「あぁ。坊主、お前は残れ」
そう男が言うと、私と俊哉は理由も言えずに別れた。
「あ、あの…俊哉クンは…?」
「心配するな。別に取って食う様なマネはしねぇよ。お嬢様はこの先だ」
煌びやかな花柄の襖の前まで案内する男は「お嬢様、連れて来ました」と襖の前でそう言った。
「お通しなさい」
スッと襖を開けると、そこには夏だというのに着物を着る北条が正座していた。
彼女の制服姿しか見ていなかった分、とても綺麗で、以前の様な怖いイメージは全く無かった。
「北条さん…」
「お久し振りです。詩帆さん…鬼柿、下がりなさい」
「はい。失礼します」
私を部屋に招き、あの強面男改め鬼柿を退室させた北条は、改めて頭を下げる。
「ようこそいらっしゃいました。何もお持て成しも出来ず、すみません」
「え、あ…きゅ、急に来たアタシ達が悪いから」
「ありがとうございます。詩帆さん」
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