【4】 黒い万年筆

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◇ ◇ ◇ 初めての秋。 初めての暮れに正月、そして冬。 瞬く間に時は過ぎ、ふたりは卒業の時を迎えた。 彼は無難に背広の上下を。 加奈江は袴に鴇色の着物を合わせた。彼が選んだ反物で仕立てた着物を着たのは初めて。 「思った通りだ」 政は言う。 「お前に良く合う」 目を細める彼はうれしそうだった。 アズキはタンスの角で大きなあくびをひとつしていた。 小学生の頃から数えて4回目。 回数を重ねたから慣れるものでもなく、ふたり並んで席に着き、節目の儀式は感慨深くお互いの心に刻まれた。
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