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「アズキっ!」
尾上家の朝は、新妻・加奈江の声で明ける。
「あなた、ダメじゃないの。あれほど畑の上は歩かないでって言ってるのに!」
味噌汁の薬味用に植えたワケギの隣に、つい先日畝を作った畑は、点々と梅の花が散っている。
今は秋、落葉の季節で、梅の花は咲いていない。
ぽつぽつと開く穴ポコは、老描アズキ(推定10歳以上・オス)の足跡だ。
「カナが豆まきゃ、アズキが踏んづける」
軽口を叩く声がする。
「政!」
と、加奈江は声の元にぴしゃりと返した。
相手は言わずと知れた夫である政だ。
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