【4】 黒い万年筆

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義父から譲られた方を親指とすると、政が所有している方は小指ほどにも太さが違う。 天冠の白い星と黒い本体は同じなので、区別がつかなかった。 「西欧の、成年男子の手ならぴたりと合うんだろうけど、カナみたいに小さくて華奢な手じゃ大きすぎるんだ。クソ親父、何考えてるんだろうな」 ほら、と政は彼女の手を取り、手の平を合わせる。 たしかに。 指の関節ひとつ分くらいは大きい彼の手と、人から身体の割には小さいと言われる私の手。 彼や義父くらいの手の大きさの人なら収まりが良いのだろうけど、私には大きすぎるのね。 がっかりして加奈江はこぼす。 「残念。すごく書きやすかったから……。せっかくの頂き物なのに、それも残念」 「うーん。そんなに気に入った?」 「うん、書き味が滑らかでね、持つ時にペンをしっかり握れたの」 「うーん」
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