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◇ ◇ ◇
季節は秋も深まっていた。
蚊帳を張らなくなった寝室に入り、加奈江が床についたのは夜半を過ぎてのこと。
もらいものの万年筆と手持ちの万年筆、そして政の万年筆相手に書き比べをしていたら時間が瞬く間に過ぎていたからだ。
書くのは何であれ好きだ。一度取りかかると止めるのが難しいくらい。仕事でもらっている筆耕も、量次第だけれど楽しく書ける。
政が言うように、道具の大切さを噛みしめながら書いた。
手持ちのペンは論外。政のペンは問題外。もらい物のペンは、書き味は良いのにキャップが外れやすいのが嫌だった。一度キャップを外してみたけれど、本体だけだと短すぎるし、重さのバランスが崩れてとても書きにくくなった。
たかが一本のペン、重さもほんのわずかな違いなのに難しい。
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