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頬をさすり、髪を撫でるしぐさは、ふたりで床を並べる時には必ず政がすること。彼は彼女の髪に触れるのが好きで、彼女も彼に髪を梳かれるのが好きだった。
「カナ」
政は言う。
「なあに」
「お前、俺に隠していることがあるだろう」
どきりとした。
けど、あえて知らないふりをする。暗がりで顔が見えにくくて有り難いと思った。
だから、問い返す。
「どうしてそう思うの」
「だって、親父とあの武先生だろ。黙ってお前を送り出すはずがない」
「何もないって」
「ウソつけ」
さあ、言え、言うんだ、と政は何度も責める。
何もないと、逃げても許してくれそうもない。
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