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「だって、卒業式の時に大きな腹して出席するわけにはいかないだろう?」
「そつぎょうしきい?」
加奈江の声は裏返ったものになる。
「あと半年ぐらいあるし……。それこそ卒論だ何だと落ち着かないのに。お前が大変だし。――それまで何もせず、ってのも、もうムリだし」
そして、布団の縁を上げて言った。「おいで」と。
とくん、と心臓が高鳴る瞬間、ふたりは全身が甘やかな熱に満たされる。
腕を伸ばし、引っ張られて彼の布団に入る。
加奈江が大好きな瞬間だ。
素肌で寄り添うのにはまだ慣れない身には、彼の腕に包まれると、もう政以外何も考えられなくなる。
けど、今日は伝えたいことがある。
「あの、ね」
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