【4】 黒い万年筆

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特に加奈江にとっては思いもひとしおだった。 卒業証書には、水流添加奈江ではなく、尾上加奈江と記されていたから。 生家との距離を感じて少しさびしく、政と生きていく覚悟を刻まれているようにも思えた。 謝恩会で恩師の武にあいさつをした時、以前質された質問への答えを求められるのかと思ったが、武はニッコリと笑って「元気でね」と言ったきり。身構えていた彼女は拍子抜けした。 別れ際に、武はこう言った。 「君の舅さん繋がりでまたいくらでも会えるから。これからもよろしく」と。 側で聞いていた政はひとり苦虫を噛み潰したような顔をしていた。 武から出された『宿題』は、その後の彼女の人生にしっかりと根付き、しぶとく問いを投げ掛け続けた。 あってないような結論を彼女が導き出せるまで、相当の年月がかかることになる。
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