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一年後―――
「わが弟ながら、フニャチン野郎め!なんで絆愛高等学校にせえへんねん!」
私は今年もまた、学校見学に参加した。
今年のダシは二つ下の従弟。
昔から世話を見てやったんだから、絆愛高等学校くらい行って欲しいものだ。
昨年同様、見学後の8分01秒の自由時間…もう開始と同時に駆け出した。
「すみませーん。すみませーん」
私は入り口で声を張り上げていると
「なんだ?」
中からタオルを頭からかぶった一之瀬先生が出てきてくれた。
「お久しぶりです」
「え……と」
「去年、学校見学に…」
パカリと宝箱の蓋を開け、真っ赤な綿の座布団にちょこんとのせたピンポン玉の名刺を見せる。
「ああ~!去年の……確か弟さんがどうとか…」
「あの腑抜けは軟弱学校へ進学しました。今じゃ、眉の手入れと女の胸と尻以外に興味は…嘆かわしい限りです」
一之瀬先生も残念そうに目を伏せ、頭のタオルをとった。
「え!?」
一年会わなかっただけで、一之瀬先生の富士額の山頂が高くなっている。
そして、タオルには数本の髪の毛…
(あの毛欲しい!)
「今年は従弟の参考になるかと参加させてもらいました。あの…差し支えなければ、写真を一緒に撮って下さい。こんなに素敵な先生がいるって見せてあげたいんです」
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