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「やあ、また今年も来たのか」
マンキニ姿で笑顔を見せてくれる一之瀬先生は、すっかり頭皮と髪の比率が9:1なんだけどね…
なんて素敵なんだろう…
色白美肌の一之瀬先生の頭に、曲水の宴を行いたくなる、ゆるやかに流れる川のような髪の毛。
(あっは~ん…あの頭は誰にも渡さへん~でぇ~!
わずかしか 残っていない 髪だけど
眩い頭は 地球の至宝…
ちょっち字余り)
今年の私は一味違う。
今年の8分01秒を無駄にしない!
「一之瀬先生、大事な話ですが、時間があらへんのでちゃっちゃといきます。
私は一之瀬先生が好きなんで来年も会いに来ます」
「はい?ちょ…冗談だろ?」
「冗談で先生の毛髪アルバムを作ってませんわ。笑われへん」
「も…毛髪アルバム?」
先生の目はキョロキョロと左右に忙しく動く。
「いやぁ…俺は君よりかなり上でもうすぐ40だぞ?君がコレクションしてると言う髪だって…もう風前の灯火だ」
手をあげ、寂しそうに揺れる髪を撫でる。
「私は中途半端な先生も好きやし、これから先、ずる剥けの亀の頭みたいになったって…愛してる!!見てください!」
私が首から下げたネックレスには
“我命有限縮雲愛続誓”
「私は初めて会ったあの日から、ずっとこの気合いでおるんです。来年も絶対会いに来ます!逃げんで下さいや!」
私はそう言って、走り去った。
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