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夕陽が静かに見える中に、一人その場に佇む男が居た。
白い着物、赤い瞳をしているその男は、まるで何かを探しているかのようにその場に立っている。
この地には、【悪鬼】と言う存在が、眠っている。
【鬼の森】には、その男が現れるらしい。
* * *
「……って言う噂が最近あるんだけど、瑞貴しらない?」
「……初めて聞きました。そんな噂があるんですね?」
「うちの野球部の数人や、女子バレーの女子達も見たんだって。幽霊かどうかわからないけど、怖いよねー」
そういいながら眼鏡をかけた少女に対し笑いながら食パンを齧る少女。
眼鏡をかけた少女――鬼堂瑞貴(きどうみずき)は友人の黒埼翔子(くろさきしょうこ)の話を聞いていた。
翔子が言っていたのは通っている中学校の近くにある大きな森――【鬼の森(おにのもり)】と言われている所であろう。
最近、その噂が聞かれてるらしい。
瑞貴は少し身震いをしながら答えた。
「こ、怖いですね……私、お化けとかそういうの、苦手なんです……ッ」
「何言ってるの。【鬼堂】の名を持ってるあんたが怖がって」
「怖いに決まっているじゃないですか……【鬼堂】の苗字を持っていたとしても、私は普通の女の子なんですよ翔子ちゃん」
「瑞貴は怖がりだもんねー。で、考えたんだけど今度肝試しいかない?その森に」
「お、お断りします!嫌ですよ幽霊が出るってわかっていていきたくありません!」
首を左右に振りながら焦るように答える瑞貴の姿に、翔子はニヤニヤと笑う。
その顔で、瑞貴は思った。
(あ、何言っても絶対に連れて行かれる)
――と。
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