第00章 宿命と運命の始まり

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「――俺を斬るのか、和泉(いずみ)」 「……」  一人の【鬼】が一人の女性に声をかける。  女性の右手は真っ赤に染まり、黒い瞳が目の前の【悪鬼】を睨みつける。  そして目の前に立つ【鬼】の片手には、刀が握り締められている。  真っ赤に染まった女性の右手にも、刀が握り締められ続けている。  一歩、女性が前に出る。  彼女の瞳はとても真っ黒で、まるで光のないような瞳だった。  目の前の【悪鬼】はその瞳を見て、笑う。 「お前の瞳は本当に綺麗だな和泉。光もない、綺麗な瞳の色だ……俺はそれに今でも惹かれ続けている」 「……私の妹は、子を孕み、そして死んだ」  女性は一呼吸をし、答えた。 「お前の子……【鬼】の子を」  瞬間、女性は走りだして行き、目の前の男の腹部を持っていた刀で刺した。  男は動じることもなく、ただ静かに笑う。 「それは良かったな……お前の一族は、これで【鬼】の血を引く存在になった」 「ふざけるな」
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