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深く深く、鬼の腹部に刀を突き刺すと同時に、鬼は笑いながらまるで愛おしいかのように目の前に立ち女性の長い髪に触れる。
そしてそのまま口付けをしてもう一度笑う。
――まるで、この女性に殺されてもいいかのように。
「鬼堂和泉(おにどういずみ)……お前は本当にいい女だ。竜彦(たつひこ)の妻にしておくのはもったいない」
「……悪鬼、修羅(しゅら)よ……答えろ……見せしめに私に妹を屈辱し、そして我が夫……竜彦を殺したのか?」
「ああ」
「私に殺されるためか?」
「……それは違うな和泉。俺は殺される為にお前の夫を殺し、妹を屈辱したわけじゃない」
次の瞬間、笑みを浮かばせた鬼は、握り締めていた刀で女性の腹部を突き刺す。
ゴホッと音を出しながら、女性の口からは大量の血が吹き出した。
鬼は笑う。
「お前と結ばれることがないのであれば……お前が他の男を選ぶのであれば……俺はお前と【心中】する」
「な……に?」
「覚えておけ鬼堂和泉……鬼斬りの一族よ。我は蘇る」
「我は、何度でも蘇る」
――【お前】と言う存在が居る限り。
鬼はそう告げ、息を引き取った。
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