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鏡の前に立つ、スレンダー美女。粟島が言っていたように、脚をだし、立っている。後姿だけならまだマシだった。問題は鏡の中だ。しかめっ面をしているが、俺の顔が特定できる程度の鮮明さで映っている。
頭を抱えたくなった。
「断るなら、この写真を学校中に貼るわ」
何でそこでお前は誇らしそうにしているんだと言いたい。粟島はかなり強気になっていた。もごもごと話していた女と同一人物とは思えない身の翻しようだ。
さて。俺は本気で考えなければならない。
目の前には俺の人生最大の汚点。それが証拠としてはっきり残ってしまっている。所有者は陰湿なクラスメイト、粟島るい。正直まともに話した記憶がない。
俺がここでモデルの話を断ると、俺の恥でしかない部分を学校中にバラされる。俺イコール女装趣味の人として認知されるのは時間の問題だろう。特にクラスの男友達にはいじられるに違いない。
しかし、ここで粟島るいの提案に乗って、何が守られるというのか。俺はあくまで「女装をしたくない」のであって、今彼女の提案に乗るということは、つまり女装をしなければならない。
一瞬の恥か、一生の恥か。
「……交渉しないか」
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