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「交渉?」
予想外の返答だったらしく、粟島は首を傾げる。
「俺がお前の絵のモデルになる。でもそれは一回だけだ。それが終わったら、お前はデジカメのデータを完全に削除する。それを約束するなら、受ける」
「……一回?」
「一回だ」
「デジカメのデータはあたしが持ってるのよ。だから、久柳くんに選択肢なんか」
「粟島、俺は男だ。お前からデジカメを取り上げるくらいできる」
粟島は黙り込んだ。これで彼女はこの条件を受け入れるしか――
「じゃあ、なんで今取り上げないの?」
「……え」
これには俺が首を傾げた。
「取り上げればいいじゃない。できるなら、でも、しないの。なんで?」
「なんで、って」
「もしかして、久柳くん……」
粟島が不穏に目を光らせた。こいつの一挙一動がいちいち怖い。
「あたしがっ、好きなのね!?」
――どこをどう解釈したらそう捉えられるんだ。
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