第1章

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「交渉?」  予想外の返答だったらしく、粟島は首を傾げる。 「俺がお前の絵のモデルになる。でもそれは一回だけだ。それが終わったら、お前はデジカメのデータを完全に削除する。それを約束するなら、受ける」 「……一回?」 「一回だ」 「デジカメのデータはあたしが持ってるのよ。だから、久柳くんに選択肢なんか」 「粟島、俺は男だ。お前からデジカメを取り上げるくらいできる」  粟島は黙り込んだ。これで彼女はこの条件を受け入れるしか―― 「じゃあ、なんで今取り上げないの?」 「……え」  これには俺が首を傾げた。 「取り上げればいいじゃない。できるなら、でも、しないの。なんで?」 「なんで、って」 「もしかして、久柳くん……」  粟島が不穏に目を光らせた。こいつの一挙一動がいちいち怖い。 「あたしがっ、好きなのね!?」  ――どこをどう解釈したらそう捉えられるんだ。
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