第2章

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 粟島るいに指定された「来週の水曜日」は、あっけないほど早くやってきた。  俺の心は今までにないくらいおかしくなっていた。気が動転していた、というのが正しいのかもしれない。粟島に女装姿を撮られてから、俺の中には常に「秘密をバラされたら」という不安がいっぱいだった。  粟島の姿も自然と目で追うようになっていた。彼女の動向を気にせずにはいられなくなったのだ。決して恋なんて甘酸っぱい好奇心などではなく、恐怖心によるものだ。そして目が合うたび、甘酸っぱい方向に勘違いしている粟島は頬を赤らめるのだが、それがまた憎らしい。  俺だけが精神的に追い詰められていって、苦しんでいた。 「あー……」  意味もなく声を出すことが増えた。何も言わずにはいられないが何も言えない。 「どうした牧野。気持ち悪いぞ」  兄にもそう言われる始末。気持ち悪いのはあの女なんだと、兄には言ってやりたかった。ただ、女装の顛末をすべて話して秘密を共有する人間を増やしたくないのが本音。俺は結局その板挟みにあい、意味を持たない言葉を垂れ流すしかないのだった。
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