第1章

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 何があったかと言うと、高校の文化祭だ。  高校二年生の夏。秋の文化祭に向けて出し物の話し合いをしていたとき、突如として候補に上がった「性転換喫茶」。  なんでよりにもよって性転換なんだよつーか服装変わるだけで性転換してねーし、という心の声を叫ぶこともできず。「そういえば久柳の家って服屋だったよな、じゃあ男の背丈に合う女物とか作れる?」という無茶ぶりをされ、今に至る。  大体、両親も悪い。  俺の家は服屋……というと語弊がある。正しくはデザイナーだ。自分のデザインした服、ブランドももってるような両親。自分たちが店を持ってセールスする、というよりは、ファッションショーだとかオーダーメイドとか、そういう奇抜な方向に秀でていると言った方がいい。  忙しいはずなのに、こういう妙なことに乗り気だから。 「話すんじゃなかった」  知っている。母親は俺を溺愛していると。面白そうなことには首を突っ込む質だと。  だから女装をするのでその服を作ってくれなんて、面白そうなことを口にすべきではなかったのだ。
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