3人が本棚に入れています
本棚に追加
粟島は訥々と話し出す。決して目を合わせずに。
「あたし、あの……言いにくいんだけど……絵を。描いてて、その絵の、モデルを……」
「何で、そこで俺が目に留まるんだ」
嫌な予感しかしなかった。粟島の目に少しの光が灯り、語りだす。
「立ち姿が……キレイ、だったから」
「…………」
ああ。聞くんじゃなかった。
俺が後悔に苛まれているのとは裏腹に、粟島の語り口はどんどん熱を帯びていく。
「背中しか見えなかった。でも、脚長いし。スカート丈、絶妙だし……髪がボーイッシュなのが惜しかったけど、でも、スラッとしてて……キレイだった」
俺は、この告白をどう受け止めればいいのだろうか。
「それで、写真に思わず……でも、今。久柳くん見て、あたし。確信したの」
突然、勢いよく粟島が顔をあげた。かと思うと、俺の方を物凄い形相で睨んできた。ジャパニーズ・ホラーに出てくる女の亡霊みたいだ。
「久柳くん。あたしの絵の、モデルになって!」
最初のコメントを投稿しよう!