第一章 化ケテル

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 これはもしかしてもしかするとだ。そんな期待を込めながら、彼女は日辻の後ろを追いかける事を決意。人にばれずに行動すると言うのも難しいが、奥田はフリー記者。最低限の尾行スキルは身についている。  「いやぁ、大チャンスですよーこりゃ。圭ちゃん人生始まって以来の大チャンス。これをネタにして、どっかの雑誌会社と専属になってやんぜい。私ってば天才ぃー」  そう奥田は、茶色いキャスケット帽子をかぶりなおす。赤いフレームのメガネをクイッと持ち上げる。メモ帳とボイスレコーダーの準備は完璧。クルンと片手でピンクのシャープペンをペン回しした彼女は、忍び足で日辻の後を追いだす。  ひょこひょこと追いかけるその姿は、ちょっと間抜けな一面だった。  ◆  城崎は、フォークに巻いたパスタを口へといれた。  白いテーブルクロスがかけられたテーブルの上には、イタリア料理が並ぶ。城崎の前には、ボンゴレパスタ。大神の前には、リゾットが置かれてある。少し視線を外へと向ければ、都心の街並みが見渡せるような夜景がうつる。白い雪も重なり、その景色の美しさがより増してうつる。真っ暗な街並みに輝く数多の光。生活の数だけ光があると言うのか、まるで星空だ。  本当にお洒落な所に来たもんだ。城崎は素直に感心した。大体大神とのデートをするとして、ご飯を食べるとしたら、ラーメン、ステーキハウス、牛丼屋、居酒屋(と言っても二人は未成年)と言ったように、女っ気のないような場所を選んできた。実際に城崎としても、拒否するほど嫌いと言う訳では無い。ラーメンは好きだし、お肉も好きだ。ただ、城崎の誕生日の時にラーメン二郎に案内されたときは、流石に無いなとは思ったけども。  なので、イタ飯が出て来るようなお店に呼ばれることは無いものだと思っただけに、少し意外だった。慣れないと言うか、敷居が高いと言うか、実は、少しだけ緊張して居たりもする。  高そうだなぁ、ここ。なんて値段が頭にちらつく時点で、彼女もまたこういう場所は向いていないのだと気付かされる。ラーメン食べたくなってきた。  「どうして今日はここなの?」  「んー? ほら、お前の誕生日そろそろだろ? たまにはこんな感じにお前の誕生日をお祝いしよーかなって思ってな」  「玲雄くんの方が先だよ」
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