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「え、そうだっけ? 俺が先だったっけ誕生日」
「てか今日」
「え、嘘だろ!? 今日だっけ俺!? うっわ、すっかり忘れてたわ」
「ばーか」
頭をボリボリとかき、困った顔をする大神。本気で自分の誕生日を忘れていたようだ。ただ、それでも彼女である城崎の誕生日は覚えていたのは、素直に嬉しい。ただ、もう少し自分を大切にと言うか、城崎を一番にして、自分を蔑ろにしてしまうところをなおして欲しいと言うのが、城崎の素直な気持であった。
「あ、じゃあ今日は俺の誕生日も兼ねてるって事でどーよ!」
「良いと思う」
「へへ、何とかなったな」
「何が?」
基本的に、大神は頭が良いし、仕事の能力としては、非常に高い。運動も得意だ。そしてやる気も高いし、周りに対してもかなり気がきく。言ってしまえば、出来る男だ。城崎は彼の凄さは評価しているし、尊敬もしている。だが、大神はそれ以外は残念なのだ。言い換えれば、天然。馬鹿だ。勉強と運動と仕事を除いた彼はオール残念。それが大神玲雄なのだ。
実際今も本当に何とかなったと言わんばかりの落ち着きを見せている。一体どのように自分の中で自己解決したのか、少し頭を開いて中を見てみたいものである。
実際今も、リゾットを冷ます為に、何度もスプーンで掬ったリゾットに息を吹きかけている。それも渾身丁寧に冷ましている。大神の弱点その一、猫舌。ただ、そんな姿を見て、彼女は内心ほくそ笑むのだった。
すると彼と目が合った。
「あ、リゾット食うか? うめーぞ、これ」
「もらう」
「あいよ。ほれ、あーん」
散々冷ましたリゾットを掬ったスプーンを、笑いながら彼女へと向ける。口を開けてくれれば、そのまま食べさせてあげるという事だろう。そのスプーンを見て、城崎は色々と考える。色々考えたうえで、彼女は頬をほんのりと赤らめた。唇を尖らせ、恥ずかしそうに彼女はスプーンを奪って、自力で食べてしまった。「あーん」が上手くいかなかったことに、「あーあ」と嘆く大神。
「おいしい」
「もう少し食うか?」
「いらない」
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