第一章 化ケテル

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 「まぁ、新しいプロジェクトとか、慣れねーこと沢山して疲れんだろ。たまにはそうやって女とデートでもして、息抜きも大切だな」  亀屋は、だから今日はあんなに集中していたのかと、大神の今日の仕事の姿勢に納得する。別に普段から手を抜くような男とは思ってはいないが、今日はいつもとは違って倍以上のやる気を見せていた。非常に仕事への意気込みが強い男だ。だから、新しいプロジェクトチームの一人に組ませたのだが、気合が入りすぎるのも問題だ。根詰めて、いざって時にひっくり返られても困る。  「うし。お前今日は定時に帰れ。仕事、あと何が残ってる?」  「今のが終われば、後は今日の報告書書くだけで終わりッスけど……」  「お、調度いいな。その報告書、俺が書いとくよ。お前の今日の仕事内容は知ってるし、別段特筆する事項とかねーだろ?」  「はい、今日はいつも通りって感じっすね。あ、いやでも悪いッスよ。わざわざ亀屋さんに仕事渡すなんて。残業してでも、俺が終わらせますから」  「いいのいいの。お前は彼女とデートを楽しんで来い。飲みはまた今度な」  こう言い切られると、テコでも自分の意見を変えない男。それが亀屋だ。微妙なベクトルで頑固な親父だ。実際に疲れたと言うのあるし、それに彼女とのデートもある。今日は、亀屋の豪快な性格をありがたく思う事にしよう。  「うっす。助かります」  ◆  ハラハラと、小さな雪が舞い落ちる。  彼女の小さな手のひらには、ひらひらと雪が一粒落ちていく。手の体温に触れ、溶けていく。手の溝に出来た水たまりを、握りしめる。空を見上げれば、微々たるながら、雪が降る。真っ暗な夜空を、白い粒が彩っていく。綺麗だなぁと思いながらも、今日は傘を持って来ていないなぁと後悔する。
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