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少女の名前は、城崎凛音。黒髪のショートカットが特徴の、ネコ目でキリッとした女の子。大神玲雄の彼女である。
城崎が腕時計を見れば、午後の六時。待ち合わせの時間だ。
今日は、彼氏とのデートの日だ。彼氏である大神は、普段は仕事に追われていて忙しい人だ。最近は、新しい仕事を任されたとか何とかで、より一層忙しくて大変だと言っていたけども、その影響が彼女である城崎にも出ていた。彼氏が忙しすぎて、城崎と会う時間が減ってしまったのだ。
だから、今日は久々の大神とのデート。
楽しみだった。彼と会えることが、今日と言う日が、本当に待ち遠しかった。楽しそうに、嬉しそうに、城崎は腕時計を眺める。一分一秒、早く彼がこないだろうかと待ちわびる。一分。また一分と待ち合わせの予定時刻が過ぎていくたびに、悲しい気持ちがこみ上げる。
もしかして、残業してるのかな。仕事が忙しいのかな。
今日だって、かなり無理言ってのデートだった。先ほども言ったが、新しい仕事に今彼は追われている。特に新米中の新米。学ぶことも、挑むことも多い。家に帰る頃は遅いときは深夜だったり、疲れすぎて定時に帰っても寝て過ごすとも言っていた。相当疲れている筈だ。だから、城崎的にも無理を言ったと薄々心の中では感じていた。本当は城崎とデートすることより、家に帰って体を休める事が一番なのではないだろうか。
それでも無理言って今日会いたいと言ったのも理由がある。それは、彼女の手に握られた大きくて可愛い袋。お店のロゴが書かれたおしゃれそうな袋の中から見えるプレゼント用袋。はらはらと落ちる雪が、袋の中へと入って行く。彼女が持つプレゼントを握る手が強くなる。
私は、彼の足手まといになっているんじゃないだろうか――。
「悪い! 待たせた! なんか雪降ってきたなぁ!」
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