背伸びして、君に触れる。

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「・・・ハハ、歩、笑えない冗談やめてよ~ もー。人のファーストキスとりやがってこんにゃろ 高くつくかんね?今日奢ってよー?」 あ、私の入れた曲。 歌おう、うん、そうしよう。 ぎこちない笑みだと自分でもわかる。 歩の目がじっとこっちを見ていることも。 けれど気付かぬふり。 マイクに手を伸ばす。 でも、マイクに届く前に ーー・・・手が、手に 包み込まれる。 「ちょ、歩」 「冗談じゃねーよ。大マジ」 その目が、今まで見たことないくらい真剣で。 ーー・・・怖くなった。 こんな歩、知らない 歩はいつも笑顔でしょ? 笑ってよ、ねぇ。怖いよ 「もーいい加減にしてよね。 あ、まさか皆どっかで見てんの? 私のこと笑ってんでしょ」 目が見れない。 心臓がかつてない早さで打ち震える。 怖い、苦しい。 ワケわかんないよ。
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