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「澁さわ…さ……んぅっ……」
再び始まった律動、上体を起こした澁澤さんの首に腕を絡め強く縋りつく。もうどうなっても構わない、動きが止まると一番奥で爆ぜた。「好きです」、蚊の鳴くような声で囁いた。けれど届かない。内で達したのと同時に呟いたからだ。
「なにか言った?」
「い、い……いえ。……あっ……ん」
少しでも動くものなら、肌が栗立つ。俺の内、敏感になっている、びくびく蠢いている。体は繋がっているのに、心は繋がっていない。好きな人に抱かれて嬉しい筈なのに、どこか……寂しい……。
(これ以上、欲張っては駄目だ。罰が当たる)
あの空が白み始める夜明け前、一人で、とぼとぼ歩いて帰った日の記憶と重なる。背中を照らす月のひかりは悲しくてとても綺麗だった。
「持たない、喬木さんの内、気持ちがいいよ」
「だ、駄目です。動かな……んっっないっ……でっ」
項垂れる俺の後髪に指を絡め、抱き締める。
「………」
澁澤さんも何か呟いた。でもそれは、伝わることがなかった。
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