束の間の……。蜜月①

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「澁さわ…さ……んぅっ……」  再び始まった律動、上体を起こした澁澤さんの首に腕を絡め強く縋りつく。もうどうなっても構わない、動きが止まると一番奥で爆ぜた。「好きです」、蚊の鳴くような声で囁いた。けれど届かない。(なか)で達したのと同時に呟いたからだ。 「なにか言った?」 「い、い……いえ。……あっ……ん」    少しでも動くものなら、肌が栗立つ。俺の内、敏感になっている、びくびく蠢いている。体は繋がっているのに、心は繋がっていない。好きな人に抱かれて嬉しい筈なのに、どこか……寂しい……。 (これ以上、欲張っては駄目だ。罰が当たる)  あの空が白み始める夜明け前、一人で、とぼとぼ歩いて帰った日の記憶と重なる。背中を照らす月のひかりは悲しくてとても綺麗だった。 「持たない、喬木さんの内、気持ちがいいよ」 「だ、駄目です。動かな……んっっないっ……でっ」  項垂れる俺の後髪に指を絡め、抱き締める。 「………」  澁澤さんも何か呟いた。でもそれは、伝わることがなかった。   
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