前兆。

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 夢のような週末だった。  夢、か。いや、夢でも幻でもない、なぜならスマホのスケジュール&メモアプリには次いつ会うのか、予定が入っている。  事務的にこなしていた業務にも自然と力が入る。進んで朝の挨拶を交わしていた。メールチェック後は未処理の書類ケースを引っ張り出した。よし、今日も頑張ろう。   「喬木がやる気を出している、珍しい」 「クリスマスが近いし、正月休みに入るしさ」    今年のクリスマスは一人ではない、それも無気力な自分を変えていた。 「そうだけど。残業だって嫌な顔をしなくなったよな。やっぱりいい子が出来たんだろ?」  ご想像にお任せするよ、と小橋の視線を逸らす。新調したマフラーにも気がついていた、目敏いな。 「俺は、お前が一生独りで生きていくんじゃないのかなって心配だったんだ」 「その台詞、給料明細書を握りしめながら言う?」 「こ、これはなっ。今月はちょっぴり多いじゃん、還付金が戻ってくるだろ」 「小橋はさ、莉子さんにどんなプレゼントを渡すつもりなの?」 「内緒だよ。喬木は?」 「俺?考え中」  服がいいのかな、身につける小物がいいのかな。澁澤さんは服装からしてお洒落な人だ。出掛けるときはきちんとした身嗜み、髪も艶々に輝いていた。どういった物を手渡せば喜んでくれるのだろう。  小橋がにやつく。「やっぱりいい子がいるじゃん。紹介しろよ」。  
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