前兆。

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「いただきます」 「いただきます、お仕事、お疲れさま」  あまりの食いっぷりの良さと速さに、律ママは唖然としている。「ねぇ、喉に詰まるわよ?」もっと味わって食べなさい。とも言っていた。 「その…昼休憩が一時間しかなくて」 「サラリーマンは大変よね、決まった時間に縛られて、自由に動けないなんて。あたしは真っ平ごめんだわ」  そうだろうな、自分でお店を経営して切り盛りをするタイプの律ママに、会社勤めは難しいだろうな。毎日、上司とぶつかってそうだ。 「圭ちゃんと一緒に昼食を摂るのは初めてね」 「ええ」 「今日は話しがあって来たの」  話し?なんて好都合なんだ。俺もある、聞いてほしい。 「気を悪くしないで頂戴ね」 「大丈夫です。俺もいいですか?」 「いいわよ、あたしで良ければ」  にこりと微笑む律ママは、言葉遣いはおねぇなのに見た目が男性なのでどきっとする。笑顔が消え失せ視線を落とし、とても言い出しにくそうに途切れ途切れ切り出した。 「まだ例の彼と続いているのかしら?」 「ええ、まぁ…」澁澤さんのことかな。 「そう。あのね、はっきり言うわ、止めときなさい」  止めときなさい、何故?澁澤さんがノンケだから?辛い恋になるから?やはり賛成ではないんだ。 「理由は彼がノンケなのもあるけれど、他にもあるの」 「どんな理由ですか?」  視線を戻した律ママを真っ直ぐ見据える。「澁澤さんは止めた方がいい」。オネェ言葉ではない、素で語る真剣な忠告だった。
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