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「お前、凄いな」
涼の、手際の良さに感心するばかりだ。「そんな事ないよ。柊佑、お待たせ」と俺の膝の上から正座をする自分の膝上へと乗せた。ちょこんとお座りをする柊佑がとにかくかわい過ぎる。
「圭吾は先に食べててよ。品数が少なくてごめんね」
「俺にはご馳走だ」
いただきますと手を合わせた。
ローテーブルの上に並んだおかずはじゃが肉とわかめと豆腐のお味噌汁、大根サラダの3品だが、涼は男手ひとつで頑張っている、尊敬するよ。俺には真似できない。
「もうすぐクリスマスイブだね。幼児教室の生徒たちがピアノ発表会に向けて猛練習中なんだ」
「気合が入るな、このじゃが肉いけるよ」
「隠し味にウスターソースをいれたんだ」
「ぱぁぱ、まんまっ」
「柊佑はいい子だね、美味しい?」
柊佑は柔らかく煮込んだじゃがいもと人参を潰して薄く味付けしたものを美味しそうに食べている。涼を尊敬する理由は他にもある、それは……。
「圭吾は今年のクリスマス、予定はないの?僕はピアノ教室の発表会の準備で大忙しだよ」
「あ、うん。今年も一人かな」
「そっか」
「どうした?」
「あのね……」
何かを思いだしたのか、笑みを浮かべる。俺は俺で、正直に言えず、不甲斐ない気持ちで一杯だった。澁澤さんと過ごす予定だ、でも予定は未定。律ママの忠告を気にしつつもクリスマスプレゼントはどんな物にしようかと悩んでいる。これでは、自分から連絡を絶つのは無理だ。
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