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誤魔化した。クリスマスプレゼントをどうしようかなと悩んでいるのは事実だが。するとなんの迷いもなく欲しい物を口にする、「新しい図面ケース入れがいい」と。
あの筒型の?背中に引っかけているケースだよな。
「そろそろ新調しようかと考えていたところだ」
高い買い物ではない。自分としては多少なりとも高価な品物を渡したい。初めて過ごすクリスマスだからだ。
「俺にとっては必需品だよ。仕事場に持って行く大事な物だ」
「…分かりました。他は?」
「ない」
惣菜パンを食べ終えた澁澤さんは困った表情を浮かべる俺に「そうだな…」と切り出す。
「二人で、クリスマスイブの食事を準備しよう。喬木さんはシャンパンをお願いします」
図面ケース入れとシャンパン1本が、俺からのクリスマスプレゼントになるのか。
「スーパーで売っているシャンパンでいいよ」
「そ、それだけですか?」
「他はいらない」
冗談を言っているわけでもなさそうだ。そう望むなら特別な日に二人で食事の準備を。もしかすると澁澤さんは。
「料理をするのは好きだけど、たまには並んで一緒にご飯を作りたい」ポツリと呟く。
憧れているのかな。彼ほどの腕前を持ちあわせてはいないが、出来る限り、精一杯のサポートをしよう。
「楽しい日になるといいですね」
「ああ」
「ツリー、飾りましょうか?」
「そうだな、リースも飾ろう」
少しずつ、新たな一面を知っていく喜びを噛みしめた。
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