前兆。

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 喜んでくれるかな、役立つといい。正規店でのネット通販の画面の購入ボタンを迷わずタップする。来週末までには間に合う筈だ。シャンパンは、職場に近い酒屋さんにでも予約しておこう。  思い出が残る、楽しいクリスマスイブを過ごせるといいな。 ◇◇◇◇◇ 「喬木、ちょっと」 「はい」  柳本課長の呼び出しだ。最近、よく呼び出しがかかる。やれやれ、どうせ大した用件ではないだろう。処理しかけた支払い手形をデスクの上に置いた。 「なんでしょう?」 「忘年会の幹事役のピンチヒッターを頼む」  ……は?一瞬、目が点となる。  忘年会は二日後だよな。よくよく聞いてみると幹事役の田中さんがインフルエンザの陽性反応が出たそうだ。それで朝から姿が見えなかったのか。柳本課長が言うのには幹事役を片山さん、俺にお願いしたい。小橋は挙式の準備を含め慌ただしいだろうとリストから外した。  幹事役。入社以来、初めてだ。 「1度くらい経験しておくのもいいだろ」 「そうですね。分かりました、お店は手配済みですか?」 「そちらは大丈夫だ。幹事は早めに到着しておくように。会費集め、支配い、その他の細かい気配りを忘れずに。あ、そうだ」  まだ何か用件があるのか? 「他に押さえていた店へのキャンセルの連絡を今日中に頼む」 「…分かりました。連絡先を教えて下さい」    自分がしたくないからと面倒くさいことを俺と片山さんに押し付ける魂胆だ。片山さんは苦手なお局さまだが、ちゃきちゃき動くタイプの彼女が相方だと楽かもしれないと気持ちを切り替える。  でも。まてよ。 「つかぬことをお訊きしますが」 「なんだ?」 「二次会までのお付き合いを?」 「当然そうなるな」  言葉を失う。二次会は強制ではないが、柳本課長の冷めた目が圧力を掛けていた。  二次会……。これも初参加だ。澁澤さんと会うのが夜中過ぎになる。機嫌が悪くなった表情が頭の中に過った。  
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