前兆。

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◇◇◇◇◇ 「今日は宜しくね」 「…宜しくお願いします」  喬木くん、元気出しなさいよぉ!と背中を叩く音がした。  い、痛い。片山さんはうふふと笑う。宜しくね、の意味はほぼ面倒くさい役割を俺に押し付る気なのだろう、ぞわりと震えた。 「朝から小さなミスが多かったわね」 「……う、まぁ。はい、すみません」    そうなのだ、初の幹事役を上手く務めることが出来るのか、そわそわしっぱなしだった所為だ。小さなミス、彼女はニマニマ笑い、しっかり見逃さない。 「社名を間違えたり、銀行印を忘れて取りに戻ったり。お得意様の担当者名も間違えたでしょう、データアップの更新も忘れていたわね。これは見逃せないわ、新人以下よねぇ、しっかりしなさい」 「……すみません」 「そういう頼りない面も気に入っているのよ。幹事役、頑張りましょうね」  情けないが、しきりに頭を下げていた。柳本課長の呆れた視線を思いだす。小橋っ。そういやお前も影で肩を揺らしていたよな。お祝いの金額を減らそう、と意地悪い感情が湧いてくる。 「中に入るわよ」 「はい」  すごすごと彼女の後ろを着いて歩き、和食料理店の敷居を跨いだ。「いらっしゃいませ」朗らかな、愛想のいい仲居さんが出迎える。
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