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前方を走るタクシーに乗り込んだのは、助手席に俺、後部座席には小橋、井上さん、金田さんの三人だ。総務部長と柳本課長が乗車するタクシーにはなんとしてでも拒否をしたかった。その考えは小橋達も同じだったようで、無言のまま同じタクシーに乗車した。
「あんな息苦しい空気には耐えられないよ……おい、後方のタクシーが消えたぞ!」
小橋が大きな声を上げる。え?振り返ると、後方を走っていたタクシーの姿が消えていた。
「どういうことかしら?」
「喬木、電話しろ」
「は、はい」
俺のスマホが震える。柳本課長だ、何処かではぐれたか?
「悪いな、喬木。ママから連絡があったんだ」
ママ?柳本課長お気に入りの銀座高級クラブの?
「俺に会いたいんだって。すまんな、総務部長とそちらへ向かうよ」
「……分かりました。……はい、伝えておきます。今日はありがとう御座いました、お疲れさまでした」
2人減ったか、よしよし。少しでも減る方がいい。
「喬木くん、課長たちは?」
「銀座へ向かうそうです。課長から今日はお疲れさん、ありがとうとの伝言です」
「銀座?上司だけで高級クラブか!」
「小橋もそっちがいいのなら、遅れて行きなよ」
「……行かねぇ。接待のお供みたいで嫌だ」
ま、そうだよな。全員一致で納得した。
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