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「喬木も1杯引っかけるだろ?」
「ああ、そうだな……。井上さんと金田さんは?」
「空いてないのにさ、カウンター席に移動したよ。イケメンバーテンダーにカクテルを作ってもらうんだと」
ふぅんと、視線を動かす。俺の目がぎょっとなる。ソファーからずり落ちそうになったが、なんとか体制を整えた。しなを作る派手な金髪、愛想を振りまくのは。
「代役の律です。宜しくね」
「りっちゃん、可愛い!」
「ありがとう!嬉しいわ!」
投げキッスをする律ママだ!よかった、暗がりのボックス席で。奥の様子は分かりにくいと思う。オーダーを取りに来た店子に「マティーニをお願いします。あのバーテンダーさんは臨時の方ですか?」とさり気なく降ってみる。
「はい、うちのがインフルで休みでして、二時間だけお願いしました」
二時間……。俺たちが滞在をする時間帯と重なるな、前へ移動しなければ気がつかないだろう。
「ニューハーフのママさん、面白いな」
「そ、そっか。面白いのか」
「うん、だみ声なんだけど盛り上げるのが上手いよ」
ジントニックを引っかける小橋はご満悦の様子だ。澁澤さん……。何処にいるのだろう。スマホが鳴らない、短いため息を溢した。
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