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「どうしたんですか?」
「スマホを置いていったでしょう?さっき着信音が鳴ったの」
着信音……。胸がざわつく。井上さんは常識がある女性だ、他人の携帯に勝手に出るような真似はしないだろう。落ち着け、最後まで話しを聞くんだ。
「それでね、わたし……」
「……出たんですか?」
「ううん、出てないわ。相手の名前だけ見っちゃったの、ごめんなさい」
なんだ、出てないのか。彼女の慌てぶりからして、てっきり、かと思った。名前……。相手は誰だろう、渋澤さん?榑林さん?それとも別の人?なるべく平静を装い、空いているソファーのスペースへ腰を落ち着けた。
……スマホはどこだ?
「……悪い、喬木。電話に出てたのは俺なんだ。渋澤さんからだった」
こ、小橋!お前……!
井上さんよりも更に青ざめた顔をした小橋が「……はい、これ。なんかめちゃくちゃ機嫌が悪かった」と頭を搔く。俺のスマホを手渡すと何度も謝りの言葉を繰り返していた。
まさか、二次会の場所を教えたとか。小橋は渋澤さんと、どんな会話をしたんだ?謝ってばかりいないでその内容が知りたい。
「小橋、頭を上げてよ。あの、その……」
「う、うん。あのな……」
小橋が口を開いた瞬間、俺のスマホがコールする。ぎくっとする。
……渋澤さんだ。
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