壊れた関係。

11/11

2315人が本棚に入れています
本棚に追加
/253ページ
────── ──── ───………… 「圭ちゃん、圭ちゃんってば。風邪、ひくわよ。そろそろ帰らない?」 「……もう少しだけ……ここにいます」  ブロック壁を幾つか積み上げただけの簡単に座れる場所に、ずっと居座り続けていた。寒さを全く感じないんだ、今夜も冷え込む夜なのに。  まるで、全ての感情が抜け落ちたようだった。  これが、俺。元の俺。澁澤さんを好きになる前の俺。他人とは深く関わらず、無気力に生きてきた自分自身だ。 「あたしも少しだけ付き合うわ」 「律ママはお店に戻って下さい。俺は1人でも大丈夫です」 「店のことは気にしないで、優秀なスタッフがいるもの。圭ちゃん、泣きたかったら泣いてもいいのよ。誰も見てないんだから」  泣く?なんで?俺が?  心は哀しみと喪失感で溢れている筈なのに、不思議と涙が出てこない。  さよなら。  最後に、澁澤さんが残した台詞。  2度と会うことがないのかな。道ですれ違ったとしても、無視をするのかな。  俺はまだ、何も伝えていない────。   「大丈夫?圭ちゃん?きっと、いつか。圭ちゃんだけを大切に想ってくれる相手が現れるよ」  身を屈めた律ママの、よしよしと俺の頭を撫でる大きな掌から優しさが伝わる。慰めの言葉も素通りしていくけれど。いつかは……。    
/253ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2315人が本棚に入れています
本棚に追加