broken heart・1

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broken heart・1

 ピンポーン。  インターホンが鳴った。 「はい」 「今晩は、×××運送です。荷物のお届けに来ました」 「ありがとうございます」    仕事が上がったのが18時過ぎ、アパートに荷物が届いたのが19時ちょうどだ。伝票に受け取りのサインをし、荷物を受け取った。  先週末の忘年会の日の夜は、律ママに迷惑をかけてしまったなぁ。寒空の下、俺が帰る気になるまで付き合ってくれたんだ。  風邪を引いてないかな。個人的な連絡先を知らない俺は土曜日の夜、律ママのお店に直接電話をかけてみた。心配だったのとお礼と…、それと……。もう大丈夫です、と伝えたかったんだ。 「心配をしてくれてありがとうね。圭ちゃんこそ早く元気になってね。体は頑丈なのよ。またいつでも遊びに来て頂戴、お待ちしております」  カラカラと、明るく笑う律ママの声に安心をした。「はい、ぜひ」と返事をし、スマホの電源を切る。  澁澤さん…。    アドレス帳を開け、名前を見つけると胸が傷む。いつの間にか着信拒否の設定は解除されていたが、俺から電話を掛ける勇気が湧いてこない。  あの酷く冷め切った瞳が。スッと挙げた拒否の手が怖くて、躊躇する。 「皮肉なもんだな」  プレゼント用に頼んでいた荷物が今頃になって届くなんて。  新しい図面ケース入れと俺にしては高価な品物だった。シャンパンは小橋と莉子さんに贈ろう。キャンセルは出来るかと思うが、幸せそうな2人に飲んでほしい。  クリスマスイブは10日後か。悲しかったが、スマホのスケジュール帳のアプリを開けると予定を削除した。  
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