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まさか澁澤さんが、この状況を救ってくれるだなんて思いもよらなかった。
「貴方が、この人の?」
「ああ、そうだよ。俺もさ、君と同じ気持ちで付いて来たってワケ。気が気でなかった」
な?と澁澤さんは目配せをする。ここはうんと頷いておくべきなのか?
「嘘だ、だって葉山さんより若くていい男……」
隣の葉山さんに失礼な台詞だ。確かに澁澤さんは朝の通勤ラッシュ時の満員電車の中で、ひときわ輝きを放っていたからな。この可愛い男の子が目を奪われるのも無理はない。それから葉山さんだけじゃなく、俺に対しても失礼な台詞を吐いていた。
「貴方みたいな人が平凡地味サラリーマンと。釣り合わない」
付き合ってるの?だとさ。カチンと来そうだった。我慢、我慢。黙っていれば事は丸く収まる筈。うーんと澁澤さん目を泳がせ考えている。
「確かに地味だけど、案外いいところを持ってるよ」
「どんなところですか?」
ヤケに食い下がるな。葉山さん、貴方だって早く話しを終わらせたいでしょう?ちらりと葉山さんの様子を伺ってみる。
「圭吾、さっき睨んでたこの人と付き合っているのか?知らない人だと言ってたよな」
「そ、それは」
「俺が勝手に付いて来たんで怒ってそう言ったんだよ。察しろよ、元彼氏さん」
神経逆撫でる様な科白を!言わないで下さい!
「イマイチ納得が出来ません。貴方、ノーマルですよね」
うん、俺もそう思う。
「ちゃんと付き合ってるよ、俺たち」
澁澤さんの手が伸び、俺の手首を掴み胸元に引き寄せた。
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