broken heart・1

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 小橋が住むアパートは俺が住む場所と二駅ほど離れている。どちらかと言えば小橋の住む場所の方が都会的で、生活に便利なスーパーや薬局、コンビニなどが近い。  愛車で迎えに来た小橋の車の助手席に座り、涼たちはタクシーで後を追うことに。 「なぁ、小橋。手ぶらじゃ悪いからさ、どこかのケーキ屋さんにでも寄ってよ。差し入れをするよ」 「いいって。クリスマスケーキは用意してある。喬木にはお高いシャンパンを頂いたからな、気にするな。結局、お金を受け取らなかっただろ、俺の気がすまないよ。それよりもチャイルドシートがなくて悪かった、あとでタクシー代を渡すよ」 「それは俺から渡しておく。涼は受け取らないと思うけど」 「そ、そっか。俺も莉子ちゃんも、圭吾に楽しんでもらえたら、それでいいんだ」  お前はいい男だな。ハンドルを握る小橋の端整な横顔に「……ありがとな」、と囁いた。 「いらっしゃい、喬木さん!賢人くんから連絡があったの。ええと、可愛い赤ちゃんとお父さん?お兄ちゃんかな?どうぞ」 「こ、こんばんは、莉子さん。お招き頂き、ありがとうございます。お邪魔します」 「はじめまして、羽住と申します。こっちは息子の柊佑です。お邪魔します」 「狭くてごめんな。その内、マイホームを建てたら招待するよ。堅苦しい挨拶はなしといこうぜ」  俺たちを笑顔で出迎えてくれた莉子さんはレースや花柄を用いた、アンソロポロジーのエプロンを付けていた。小橋が莉子さんの誕生日にプレゼントをしたようだ、大人の女性が身につけても嫌みがなく上品で可愛い。キュートな莉子さんにぴったりだ。  玄関を上がり、1LDKの奥のダイニングリビングへ進むと─。  え、マジですか?莉子さんも、澁澤さんに負けず劣らず、料理の腕前が。品数がすごい。ダイニングテーブルの上が華やかだ。 「iPad で検索をして、乳幼児用の離乳食は薄味に、クリスマスケーキは食パンを代用して作ってみたの。大人用はホールチキン、サーモンのカルパッチョ、キノコのクリームシチュー、ちらし寿司を用意したんだけど……つい張り切っちゃった」 「俺も朝から手伝ったんだ。えぇと、突っ立てないで早く座れよ。例のシャンパンも出しておいたよ」
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