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焦り過ぎだ、落ち着け。拾い上げた鍵をアパートの鍵穴に刺して回す。キャンディの缶とクリスマスカードを持つと急いで部屋の中へ。
スマホ!
俺のスマホは?
部屋の灯りを点け、どきどきしながらスマホの電源をonにした。
……だよな。
期待をし過ぎた俺が馬鹿だった。そんな都合よく、出来ているわけがない。
澁澤さんからの着信やメールは一件も入っていなかった。小橋と涼の2人だけ。片山さんからは「喬木くん、merryXmas!」のメッセージがラインに(忘年会の打ち合わせ用に、渋々交換をした)入ってて、肝心の澁澤さんからは何もなかったんだ。
脱力感が半端ない。ぺたんとカーペットの上に座る俺は可愛いキャンディの缶とサンタクロースのイラスト入りのクリスマスカードを抱き締めた。
するとカーペットの上に置いたスマホが鳴り出した。今度こそ!かもしれない。恐る恐るディスプレイ画面を覗いてみる。
澁澤さんだ……!
早く出ないと「遅い」と怒り出しそうだ。
「も、もしもしっ!こんばんは」
「久しぶり、喬木さん。こんばんは。誰かと一緒なら切るよ、悪いから」
「一人です。お久しぶりです、今日は小橋のアパートで莉子さん達とクリスマスパーティーをしてました」
それから?
なにを話せば……。
そもそも普通に会話をしてもいいの?そうだ、まずはキャンディのお礼を言おう。
「澁澤さんですよね、クリスマスカードとキャンディを置いたのは。ありがとうございました」
「約束したからな。……おい、邪魔するな。…女?…違うよ……ほっとけ」
なにやら後ろで盛り上がってる様子だ。例のあの美女も?ズシンと暗くなる。俺の悪い癖だ。
「……切りますね。澁澤さんも楽しいクリスマスイブを過ごしてください」
「また勘違いをしてるだろ。友達数人と、居酒屋に飲みに来てるんだ。女性の参加者はゼロだよ。全て断った」
全て断った……?
「喬木さん、聞いてるの?……メリークリスマス、キャンディがなくなった時点で教えて下さい」
「は、はい!メリークリスマス!
キャンディが?なくなったら??」
それって、会ってもいいっていうこと?ティン缶の後ろに貼られたラベルの賞味期限の確認を。
来年の10月となっていた。
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