last・君しか見えない。

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「喬木、おはよ」 「おはよ、小橋」  社員証を取り出し、タイムレコーダーにかざした。12月の朝は冷えこむなぁ、吐く息が白い。 「俺さ、頑張ってバリバリ働くよ。昇級試験を受けようかと思うんだ」 「小橋なら受かるよ!赤ちゃんの性別はわかったの?」 「……性別はまだ……。莉子ちゃん、悪阻が辛そうで今日は会社を休んでいるんだ。だなぁ、収入を増やしたいしな、頑張るよ」  こそこそ内緒話し。……元気な赤ちゃんが生まれてきますように。無事、出産が終われば落ち着いた頃にお祝いを持っていくよ、と話しながら経理課へ続くドアを開けた。朝礼のあとはパソコンを起ち上げる。メールをチェックした。いつものありふれた日常が愛しい。それは澁澤さんという素敵な、人生の伴侶を得たからだ。俺の人生を180度変えた大切な人。 ※※※※※  退社後は足りない食材をスーパーで買いたし、愛の巣へ帰宅した。今日は俺の方が早い。澁澤さんが帰ってくるのは8時を回るそう。 「ん~と。トマトのサラダと、あ、おつまみように買った甘鯛の一夜干しがある!日本酒を燗でいただく、居酒屋風メニューにしよう」  リビングルームを温め、お風呂のタイマーをセットする。エプロンを引っかけた俺はキッチンに立った。……鼻歌をうたい、上機嫌で晩ごはんの準備をしている間に、澁澤さんが帰ってきたなんて! 「ただいま、圭吾さん」 「え?あ?し、し、澁澤さん!?」 「ドアを開けたらさ……くっくっくっ」 「聞いてました?」  肩を揺らす澁澤さんがコートを脱ぎハンガーに引っかける。あわわ、と赤面をする俺を抱き締め、ただいまのキス。澁澤さんがキスが好きだなんて、結婚をするまで知らなかったんだ。 「うん、聞いてた。圭吾さんのオリジナル曲だよね?歌詞が……」 ──歌詞が? 「忘れてください、恥ずかしい!」 「”一颯さんは世界一格好いい、優しい旦那さま~♪好き、好き、大好き~♪♪、旦那さまの為に美味しいごはんを作るのです♪」  もうっ!意地悪っ。  怒る俺の両頬を掌で包み込むと、ちゅう~っと長めのキスを落とした。  新婚夫婦の夜は濃いめです。 「風呂場でしっかり解したからな、このまま挿れても大丈夫そうだ」 「あっ、……んっ」  じれったい。腰を揺らし催促をした。潤む瞳で見上げ、太股を割り開く。澁澤さんの……おっきいのが解れた蕾に宛がうとひくひく動いた。早く、ちょうだい。   「わかった、わかった。圭吾さんは可愛いね」 「一颯さっ……はぅんっ」  ゆっくりじわじわ、内壁が広がってく。ちゅっちゅっと軽めのキスを繰り返しながら奥を貫いた。 「あ~、ほんとヤバイ。可愛くぷっくり立つ乳首も圭吾さん自身も……充分エロい。俺さ、最初にあんたを抱いたとき、ベッドの上で───」 ──ひっ!    いきなり激しい抽挿が始まった。アッアッとはしたない声を上げた。 「──ベッドの上で、色っぽい姿にやられた。……うん?圭吾さんの方が先にいきそうだ、ね」 「……ひぁっ……あんっんっ、……ご、ごめっなさっ…い…ん」  俺の先端から蜜が溢れでる。飛び散った白濁がシーツに染みを作った。ガクガク震える俺の体を遠慮なしに責め立てた。 「明日も仕事だし?ほどほどにするよ」 「あ───っ!そ、そこはっ…アッ」 ───頭の中が真っ白だ、意識が飛んだ。    不思議なもので体はだるいはずなのに空が白み始める前に目が覚めた。……これは俺の特権だ、起こさないようにゆっくり振り返って、澁澤さんの無邪気な、子供みたいな寝顔を眺めるのが至福の時間。この瞬間は俺のもの。あのね、一生、傍にいてくださいね?愛しの旦那さま。   
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