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のだが、知らんぷりを決め込む。バスタブの中でのエッチは一度しか経験がなかったが、そのぅ、あの~……。
「一颯さん、手つきがいやらしい」
「そう?」
「は、はいっ……んあ。ちょっとっ!?」
俺の胸の尖りを捏ねて、ちゅっちゅっと項にキスを繰り返す。舌先で耳の後ろを擽られ、俺のも熱を帯びはじめる途中で澁澤さんの動きが止まった、不完全燃焼だ──。
「飯、食ってねぇし。続きはあとでね」
「は……い」
しゅわしゅわ、萎えていった。……一緒に暮らしはじめてから少し回数が減ったような??ねぇ澁澤さん、俺のこと、これからも飽きずに抱いてくれますか?
「うわ……ぁ、すごい」
「冷蔵庫のあり合わせだけど。明日のお弁当のおかずにもなるよ」
「一颯さんの作る料理は世界一美味しいです。お茶を煎れますね」
ダイニングテーブルの上に広がるのは木綿豆腐をまるまる一丁つかったハンバーグ、つけ合わせは長芋のおかか和え、野菜スープ、さつまいもスティックだった。感心するところは、澁澤さんは必ずデザートをつけるんだ。特別な人しか作らない彼の、いや、旦那さまの手料理をほぼ毎日味わえる俺は贅沢ものだ。
「鶏ひき肉を使ってひじきも練り込んだ。お肉100%のハンバーグよりもふわっとやわらかだよ」
「大根おろし、おろしショウガ、刻みネギのトッピングがおいしそうに見えます」
「和風醤油だれと刻みのりをかけてどうぞ」
「いただきます」
手を合わせた。向かいあって晩ご飯をいただく。リビングは新婚らしい、スイートなコーディネートでさらに気分が上がる。オーロラをイメージしたペンダントランプ、たっぷり収納が可能なバタフライカウンター、ナチュラルな白いソファー。
澁澤さんはDIYも得意だ、これは結婚後に知ったんだ!市販のテレビボードではなく、取っ手付きのカラーボックス2つを使用したおしゃれなテレビ台。扉に木目のリメイクシートを貼っていることで高級感が出ていた。
「中身を見せたくねぇしな。……結婚をしたら、日曜大工をするのも夢だった」おっさんくさいかな?と照れながら首を搔く。
「いいえ、俺は不器用だから逆にうらやましいです。素適なテレビ台をありがとうございます」
そして話題は俺の誕生日だ。その日の夜はチーズフォンデュ、ケーキの飾り付けを2人でしようと。
「好きなフルーツやお菓子を乗せてオリジナルケーキを作ろうよ。……楽しいよ、きっと」
「7月だと桃かメロンでしょうか」
「プレゼントは、これもお楽しみで」
「───プレゼントまで……?結婚ができただけでうれしいのに」
「年に一度の誕生日なんだ、旦那としてお祝いをさせてよ」
夜は飽きるどころか愛が深まっていく。……お風呂場で感じた不安が消し飛んだ。
「……すこし……んあっ……スピードをっ」
「……じゃあ、圭吾さんが動いて」
「あっ、」
ゆるゆる勃ちあがる俺自身が卑猥だ、澁澤さんが見てる。早く動かなきゃ。一緒にいきたい。澁澤さんに怒られる、頭のなかがぐちゃぐちゃだった。
──朝、目が醒めると毎日が同じ光景だ。俺の隣には澁澤さん。すやすや眠りこける子供みたいな寝顔は俺のもの。きらきら輝く王子さまみたい、格好いい!朝食とお弁当は作ろうかと躰を起こした。
「──待って、おはよう圭吾さん」
「おはようございます」
俺の手首をつかみ、ニヤニヤ笑うのはまた見惚れていたことに気がついていたんだ!もぅ、意地悪。
「気づいてました?」
「うん」
モーニングキスも日課となっていた。
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