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ぽふっとベッドの上に体が沈んだ──。澁澤さん考案のベッドルームは淡い茶色を基調としたナチュラル系だった。柔らかい素材、優しい色のファブリックで副交感神経が優位に……とかなんとか?リラックス効果があるそうだ。
「レイアウトをする家具を考えること、インテリアのテイスト別のデザインを知れば、最適な寝室の空間を作ることができるよ」
「へ、へぇ、そうなんだ……!」
はは、専門的なのはわかりません、コーディネート関係はおまかせします。俺も、お手伝いができる範囲で協力はしたけれど──。
そして寝室に置くキャビネットの上には二人にとって大切なモノを飾っていた。俺はクリスマスプレゼントでいただいた懐中時計、去年の誕生日プレゼントのアクセサリーがしまえるオルゴール。澁澤さんはロシアに住むお祖父さんから一級建築士の合格祝いにいただいたブリキ製のノルディックシボレーだ。
キャビネットの引き出しのなかには記入済みの婚姻届けとプロポーズの時のメモリアルブックをしまっている。
ずっと考えていたことを打ち明けてみた。
「新婚旅行はロシアにしませんか?ご挨拶も兼ねて一度、お会いしたいです」
「就職をしてから一度も行ってないなぁ。お盆休みを利用するか、結婚の報告と……観光地を案内するよ」
「日程を調整しますね、有給もありますし。くれぐれもお義母さんたちには内緒で」
「わかってる。着いてきそうな勢いだ、マジ勘弁な!」
「俺も。マジ勘弁です……」
過去2回の失敗をした苦笑いの澁澤さんはスマホのロックは解かないよう気をつける、と約束をした。当時、小学校3年生の澁澤さんが夏休みを利用してロシアに住む祖父母に会いに行ったとき、駄々をこねて欲しがったクラシックカーのエピソードを聞くことができるかも。
観光地巡りもそうだが楽しみが増えた。
◇◇◇◇◇
軽めのキスを繰り返す俺の頭のなかはチーズフォンデュを半分残しちゃったよな~。バースデーケーキ!これ……も。
まだ半分しか食べてない。
「……喬木さん」
「へっ、あっ?」
“喬木さん”、久しぶりに聞いた。
「集中しろよ」
「はっ……いっ」
もぞもぞ身を捩る。スラックスのジッパーに澁澤さんの手がかかり、下着ごと降ろした。今夜は何もしなくていい、とは言ってたが。
「──俺もします」
結婚をしてからというものの、愛情表現があからさまになったなと思う。淡白だった昔の自分とは違う。
明日は品川プリンスホテルに行かなくてはならないのに。……体力を残しておかないと。
「……んっ、く……一颯さっ……のっ……おっき」
咥内で硬さと質量が増してゆく。舌先で蜜をすくい上げる。
「圭吾さんだって……」
「……クリスマス……以来ですね」
それよりも早く欲しかった。澁澤さんの指と舌で充分に解れた蕾は今かと待ちわびる。
「……ふっあっ。あっん」
態勢がかわり後ろから。一気に俺を貫いた。
「ふっぅ、……ぁっ」
「……どう?気持いい?」
「……はっい」
なにも考えられなかった。チーズフォンデュ、バースデーケーキ、品川プリンスホテル……全てが吹き飛んだ。きつくシーツを握りしめる。
「圭吾さん、誕生日、おめでとう」
「ありがとう……ございっ……まっ……す」
俺の項に、ちゅっとキス。また態勢が変わる。
「あっあっ、あっんっ……んぅー」
繋がりながら交わす口づけも好きなんだ。
「ちょっ、頼む。緩めて?」
「こ、こう?」
突き上げる澁澤さんの顔が少し歪む。絶頂が近いのか低いうめき声とともにあたたかな飛沫を爆ぜた。
「───シーツ……汚しちゃいましたね」
「いいよ、換えはある」
「……ひぁっ、……そこっが、気持いい」
「圭吾さん、可愛いなぁ───……」
再び俺の感じる場所を攻め立てて胸の尖りもきつく吸われ、あと2回ほど愛し合った夜。……眠りについたのは午前3時を過ぎていた。
◇◇◇◇◇
澁澤さん────。
どこ?
隣が温かい、起きたばかり?
「おはよ、圭吾さん。先にシャワーを浴びる?」
「……おはようございます」
寝ぼける俺の髪をくしゃっと撫で、モーニングキス。惚ける俺の顔を覗き込んで吹き出した。
「今日の予定がなかったらな、風呂場で2回戦にチャレンジしたかった」
「……や、ですよ。体力が持たない」
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