2315人が本棚に入れています
本棚に追加
/253ページ
「圭吾さん、待ってたわ~!」
「お、お、お義母さん!?」
会うなり、いきなりのハグ。俺の頬に擦り寄せ、右頬に唇が触れた。相変わらず優しい、ふんわりした匂いだ、唇の感触が柔らかくてどぎまぎした。さすがに照れる。
「今日はありがとうございます」
「いいのよ、圭吾さん!他のお客さまに迷惑をかけたくないからスカイラウンジの貸し切りはやめたの。こっちのお部屋の方が広いでしょ?」
「ったり前だ!……おい、お袋。なんだ、あれ……」
「うふふ、驚いた?あんたたち、挙式と披露宴もあげなかったじゃない。わたしと組長からのお祝いよ」
うれしいが、あれは、ちょっと、なぁ……。
「……ありがとう……ございます」
澁澤さんの眉間に皺が寄りはじめる。俺と組員たちだけがひぇっと青ざめた。
「圭吾さんの誕生日パーティーのお祝いをはじめましょう。今日はビュッフェスタイルにしたの、坂本!」
「へ、へぇ、姐さん!」
「ぼけっと突っ立てんじゃないの、あんたたち、クラッカーを持ちなさい!」
俺たちが招かれた中宴会場は34F のルビー、座席数300、ビュッフェスタイルだと200……200!?
……も、いないよな。……みたところ、ざっと80人くらい?
「乾杯は俺が取る。龍輝、雪士、おめぇらも兄弟として祝いと歓迎をしろ。喬木さ……圭吾さんと最初に盃を交わすのは俺な」
え。お兄さんたちもいるの?!
お義父さんと盃か、緊張するじゃないか。澁澤さんだけが無言状態だ。
誰だって、きっとびっくりするよ。紅白の垂れ幕に、でかでかと『圭吾さん、お誕生日おめでとう!一颯さん、圭吾さん、こ結婚おめでとうおめでとうございます!」の文字が見える。
中央テーブルの上には3段重ねの……。
「圭吾さん」
「はい」
「俺の目がおかしいのかな。あれはウェディングケーキかな?」
「バースデーケーキとウェディングケーキを兼ねたものですね、高さが3段ありますよ」
「皆の前でケーキカットをしろと?」
「……たぶん」
あ~、完全に目が据わった!
「よ、お二人さん」
「こ、こんにちは、雪士さん」
「喬木さん、誕生日おめでとう。んなに怖がるな。一颯、ご機嫌斜めじゃねぇか。乾杯の音頭と同時に、クラッカーを鳴らすらしいぜ」
今日の主役は俺たちだから席は当然、ど派手なメインテーブルだ!ドレープたっぷりのテーブルクロス、ガーランド、赤やピンク色のリボンやペーパーフラワーの飾り付け、そこに座るらしい。
「ちょっと~早く席につきなさいね?一颯ったら、ぶすっとしてないの、イケメンが台無しよ!?」
「行きましょうか」
「───ああ」
どこか腑におちない様子でメインテーブルへと進み腰を落ち着けたが、改まって確認をすると異様な雰囲気だ、列席者の顔ぶれが全員ヤクザ。場違いな場所にトリップした気分だ、これからはじまるパーティー……。どうなるのだろう。
最初のコメントを投稿しよう!