番外編。Happy birthday, Keigo♡

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「───一颯さん?」  ねぇってば。繋いでいる手を引っ張った。 「聞こえてるよ。それは、その。喬木さんのご両親と、だな……別にいいじゃん、はやく帰ろう」  照れ臭そうに笑って俺を抱き締める。耳元で「お誕生日おめでとう」。俺もまぁ、いいかと流した。    人生の長い道のりをあなたと供に歩いてゆく。それがどれだけ贅沢なことなのか……誕生日プレゼントもクリスマスプレゼントも、なにもなくても構わない。この日常がずっと続けば───。澁澤さんが傍にいなきゃ実現しないんだ。 「一颯さんのお誕生日会も、お義母さん主催で開催されるのでしょうか」  え。マンションの鍵を取り出した澁澤さんが戸惑い苦い顔で肩を落とした。 「それは勘弁な、断固拒否!当日はどこかに出かけようよ」  本気で嫌がっていたな~、澁澤さんだけがばっくれそうな雰囲気だ。ゆっくりドアを開け、二人でただいま。玄関でキスを、また熱い抱擁だが、うっとりする暇もなく。 「「あっつっ。クーラー!」」。  いい意味で笑いが絶えない。  後日贈られたきた、組長さんとお義母さんからの誕生日プレゼントは──。 ※※圭吾side、end※※※ ※※一颯side※※ ……でねぇ。  3回ほど着信を残し、LINEを送る。 “圭吾さんの職場の近くで打ち合わせがありました。出たところで待ってます”。  既読がつくかなぁ。……気づけよ、頼む。 ───今日のクライアントは新築予定の30代半ばのご夫婦だった。蜷川さんご贔屓の、古い付き合いのある工務店からの依頼だ。インテリアコーディネーター(IC)が入ることでセンスのある家、印象をよくするために専門の知識を生かしてアイデアを提案するのだが、打ち合わせ回数が1,2回で終わるクライアントもいれば10回、20回……と続く場合もある。  今回、請け負ったクライアントは奥さんがしっかりした方で、わりとスムーズに話しが運ぶ。  設計の段階でも内装の段階でも、打ち合わせ前にかなり下調べをしていたらしい。   「わたしは新居で使いたいリビングボードがあるの」 「それでしたら床材はこの3つのうちのどれかにしませんか。すこしカフェ風になるアイデアを考えますね」  ドアの色は?リビングへの入口など人を誘導したいところは茶色、個室など目立たせる必要がないところは壁に馴染ませて白はどうでしょう?と提案していく。 「素適ね、澁澤さん。あなたも素適!壁紙はここにアクセントクロスを貼りたいわ。ね、ご結婚はされてるの?」 「カタログはこちらの方が……。そうだ、サンプルを取り寄せます。ご主人さまのご意見も是非。はい、結婚してます」 「奥さんがうらやましいわね、綺麗な方なのね、きっと。ね、あなたもカタログを見てよ~。子供部屋の壁紙やフローリングも決めなくちゃ」 「……いや、普通です。ふんわりしたタイプですね。頭をなでなですると抱きついてくるところが可愛い」     ハキハキした奥さんだ、この調子だと細かい部分も含めて打ち合わせ回数が少なくすみそうだ。  そして夕方。俺は雨のなか傘を差し、圭吾さんの帰りを待つ。  どんな顔をするのだろう。  嬉しそうに顔を綻ばせ、駆け寄ってくるのかな。腕時計で時間の確認をする。  早くあなたに会いたい。  
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