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──やっと出てきた───……!
隣にいるのは小橋さんだ。彼の方が先に気がついた。圭吾さんが顔を上げる。俺は電話とLINEを送信したことの説明をした。
「全然、気がつきませんでした。ごめんなさい」
ほらな、やっぱりな。想像していた通りだ。圭吾さんは嬉しそうに顔を綻ばせた。
「澁澤さん、お疲れさま。お先っす」
「小橋さんもお疲れさま。育休中の莉子ちゃんと可愛い莉羽ちゃんによろしく」
「喬木のやつ、毎日がお花畑状態で浮かれ過ぎですよ。莉子ちゃんに伝えときます、莉羽に会いにやって来て下さい。お休みなさい」
「──お休み」
小橋さん、貴方も毎日、頭がお花畑状態だと圭吾さんから話しを聞くけど?
「憂うつな雨の日が素適に変わりました。今日はまっすぐ帰りますか?それとも、どこかでお茶でも?」
「まっすぐ帰ろう。家でのんびり過ごしたい」
傘を畳んだ圭吾さんが俺のさす傘に入る。……肩が濡れるよ、と軽く引き寄せた。
「相合い傘なんて久しぶりだ。学生の頃は雨の中を走って帰ったな。ずぶ濡れで、途中、コンビニに寄ってさ。店員さんがいやな顔をするんだ」
「俺ははじめてです。久しぶり?彼女さん、ですか?一颯さんの学生時代は楽しそうですね」
「あー、えと。まぁ……ご想像におまかせします。はい、楽しかった……」
まずい、相合い傘の相手は三年前に別れた前カノの灯華莉だ。嫌な気持ちにさせたかな、とちらちら圭吾さんを盗み見る。別に怒っているわけでも落ち込んでいる様子でもなかった。
「紫陽花の花が綺麗ですね。帰り道も素適なデートコースになりました」
「紫陽花の花が咲きそろうと曇天や雨に負けない華やかさがあるよ。圭吾さん……」
周りに誰もいないのを確認する。傘を傾けた。顔を赤らめた圭吾さんの唇に触れる。
「一颯さんは外ではキスをしないと言ってたけど。極、たま~に……」
外でのキスは(滅多に)しないが、雨つぶと紫陽花、それらが綺麗に圭吾さんとリンクして───。
俺の奥さんは可愛い人だ。
◇◇◇◇◇
「────今日の誕生日会は豪華でしたね。組長さんとお義母でに御礼をしなくちゃ」
「いいって。……これから返していけばいいだろ」
「でも」、と言いだす圭吾さんをベッドの上に押し倒した。唇を塞ぐ。
「ここ、硬いよ。窮屈そうだ」
スキニーパンツの硬く膨れ上がった場所にやんわり掌を充てると圭吾さんがもぞもぞと身を捩った。ジッパーを降ろし、かわいらしい果実が顕わになる。
「……します?」
「やりたい」
※一颯side、end※
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