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「はい、どうぞ」
ローテーブルの上に並んだのはご飯、焼いたかぼちゃ、ローストビーフをワンプレートに乗せたディナーだった。レタスの上にはゆでた卵を細かく刻み、裏ごししたものをトッピングしたミモザサラダも添えてある。花のようで可愛らしい。
「晩メシは少量ずつ食べられる、ワンプレートディナーにしてみたんだ。ローストビーフは売り物で悪いけどタレは手作りだよ」
「ありがとうございます、いただきます」
一緒にご飯をいただける日が訪れるなんて……夢みたい。はじめにコンソメスープを一口飲む。次にメインのローストビーフは噛むと柔らかく、澁澤さん手作りの醤油ベースのタレと相性がいい。ミモザサラダは花の形を崩すのに気が引けたが、俺の為に作っ……。
「どうした、箸を止めて」
「……いえ。澁澤さんがいるだけで、暗かった部屋が明るいです。もう2度とあなたが作ったご飯を食べられないと…思っ………」
仕事疲れがあるせいか、最近の俺は涙もろくなったのか感情が高まりやすい。立ち上がった澁澤さんは俺の隣に座る。
「俺も無理かなって思った時期があったよ。喬木さんを泣かせたなって、ずっと後悔してた」
ご飯、食べなきゃ。こんなに美味しくて愛情が溢れる料理を無駄には出来ないや。箸を持ち直し、「い、いだだぎま……ず」、「泣くか食べるかどっちかにしたら?ほんと、あんたって……」、俺が?「色々、ツボにはまる。年上だけど、ほっとけない」と言葉を止めた。
「続きは今度にする。しらふでは言えないです」
箸を進める俺の頭をよしよしと撫でつける。……澁澤さん?照れたように見えたのは目の錯覚?あの偉そうな人が?
「今夜は泊まってくよ、いいだろ?」
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