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週末前の、まさかのお泊まり。
モーニングもディナー同様、澁澤さんの手作りときた。冷えた朝1番には、わかめと豆腐のお味噌汁で体を温める。鮭の切り身、甘口の玉子焼き、おかかと梅干しのおにぎりが並ぶ。う……わ、お嫁さんをもらった気分だ、とても豪華です。俺にはいつもの朝が輝いてみえた。
◇◇◇◇◇
お昼休憩中の社内ラウンジで、例のシャンパン……残り2本となっていたものをネットで注文をしたあとはスマホのスケジュール帳アプリを開く。ぽちぽち打っていると───。
『今日の朝食は澁澤さん手作りの……』
「喬木くん、にやけた面してどうしたの?」
「は?へ?か、片山さんっ!?」
慌ててスマホをスーツのポケットへしまい込む。……変に思われちゃったかな。
「さっきからニヤニヤしてたわよ、わかりやすいわねぇ!」
「は、はぁ……。そうですか」
「ええ」
片山さんはきつねうどんセットを乗せたトレーを持ち、「午後の業務も頑張りましょうね、うふふ」と空いている窓際の席へと移動した。あの含み笑い、気になる……。変な噂がたたなければいいが。
オープンスペースの社内ラウンジは本社と比べると規模は小さいが、カフェのデザインはシアトル系のコーヒーショップを踏襲していた。昼食時間帯以外はオープンミーティング席として使ったり、商談、1人作業席、休憩、セミナー、ホール、イベントなど多目的に使用されている。
食後の珈琲……贅沢な気分だ。週末が楽しみでならない。俺の人生で1番、幸せかも──。
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