自称神様は中庭に降臨する

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美作美琴。 彼女は俺のクラスの生徒で、毎朝教室で静かに読書をしているような大人しい子だ。 黒髪ロングストレート、肌は色白、ぱっちり二重で、身長は俺と同じくらい。 俺はまさかそんな彼女に銃を突きつけられるとは夢にも思わなかった。 「相良先生、神様のお願いを聞いて欲しいのです」 「いや、普通逆でしょ。神様がお願い叶えてくれるんじゃないの?」 俺がそう言うと、彼女は俺を1度睨んでから目線をそらしてため息をついた。 「人間ってどうしてすぐ神様に頼るのです?普段は信じてないくせに、困った時だけ頼るなんて。図々しいにも程があると思うのです」 「ごめんなさい」 「別にいいのですよ。私は心が広くて優しい神様なのですからね!」 神様と言われて俺の目の前にいる彼女を上から下までじっくり見てみるがどう見ても人間だ。 神様の要素が一切ない。 神様を見たことないし根拠もないが、絶対彼女は人間だと思う。 もしかしたら本の読みすぎで、自分を神様だと思い込んでいるのかもしれない。 うん、きっとそうだ。 ここは担任として彼女を現実の世界に呼び戻すしかないな。 「美作さん、起きろー!」 俺は彼女の両肩を掴んでゆっさゆっさと揺すった。 頼む、目を覚ましてくれ。 「せ、先生痛いのですー。私起きてるのです、起きてるからやめてぇ…」 「あっ、ごめん」 俺が彼女の肩から手を離すと、彼女は怪訝そうな顔をして、 「先生、頭大丈夫なのです?」 と、俺の頭を心配し始めた。 俺が彼女の心配をしていたはずなのに。 なんだかなぁ。 「どうして自分のことを神様だと思ってるの?」 俺が話題を元に戻すと、彼女は熱く語り始めた。 「思ってるんじゃなくて、神様なのです。私の名前を平仮名にしてみて欲しいのです。『みまさかみこと』、『かみ』って入ってるのですよ。だから私は神様なのです!凄くないですかっ?えへへっ」 「あぁ…なるほど」 偶然だとは思うが彼女がそれで満足しているなら俺は口出ししない。 「それに、私の名前には『美しい』という字が2つも入っているのです。美しい神様とは私のことですね!」 「…そうだね」 彼女の言葉にいちいち反応していたらきりがない。 俺はツッコミを放棄した。
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